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コラム

糖尿病の運動療法について
~筋力は落ちていませんか?~

はりま糖尿病協会の協会報「はりま」第165号の三宅 一彰院長の掲載記事はりま糖尿病協会の協会報「はりま」第165号(2021.11.1)に寄稿させていただいたお話をホームページにてご紹介いたします。
テーマは「糖尿病の運動療法について」です。

みなさん、早速ですが、運動療法に取り組んでいますでしょうか?
ご存じのとおり、糖尿病治療の基本は、食事療法・運動療法です。
では、ふだん、かかりつけの主治医(先生)の診察時間で運動のことまで話が及んだりすることはありますか?食事や体重の話だけで終わってしまうことが多くないでしょうか?

そのあたりの診療状況について、日本糖尿病学会が2015年に行ったアンケート調査結果を(図1)に示します。
「診察時にどのくらいの頻度で指導を受けているか?」との質問に対して、表の下段2つ、「ほとんどない」と「受けたことない」を合わせると運動療法では55%と非常に高い割合になっています。食事療法についても46%となっているのは、かなり問題ではありますが・・・

図1 糖尿病診療における食事療法・運動療法の実施状況~患者さんアンケート1~
■診察時にどのくらいの頻度で指導を受けているか?

次に、同じアンケートにおいて、「運動療法を実施しているか?」、しているとすれば「どんな運動か?」との質問に対して、52%の患者さんが運動療法を行っており、その多くが「歩行・ウォーキング」と答えています(図2)。
では、運動していない患者さんは、なぜしていないのでしょうか?(図3)のとおり、「時間がない」と答える人が多いようです。
残念ながら、もともとやる気がない人や、運動が嫌いという人も少なからずいます。

図2 糖尿病診療における食事療法・運動療法の実施状況~患者さんアンケート2~
■運動療法を実施しているか?
■運動種目は?

図3 糖尿病診療における食事療法・運動療法の実施状況~患者さんアンケート3~
■運動していない理由は?
ヒトのエネルギー消費

それでは、どのように運動療法に取り組んでいけばよいのでしょうか。ヒトは、日々、食事からエネルギーを摂取し、体を動かすことによりエネルギーを消費しています。単純に言うと、エネルギー消費が少なくなれば、体重が増えてしまうわけです。
(図4)は、ヒトのエネルギー消費の割合をグラフに示したものです。ご覧のとおり、ヒトのエネルギー消費のうち、60~70%は基礎代謝や食事に伴う生命維持に必須な消費となります。残りの30%程度が「身体活動によるエネルギー消費」となるのですが、これには、いわゆる「運動による消費」と「日常生活活動による消費(NEAT:Non-Exercise Activity Thermogenesis)」が含まれます。
NEATとは、日本語にすると「非運動性活動熱産生」となりますが、「通勤や洗濯・掃除、買い物や犬の散歩など、日常生活の活動によるエネルギー消費」のことを言います。

一部、アスリートなどを除けば、ほとんどの人は「運動」よりも「日常生活活動」のほうに多くのカロリーを使っているそうです。ある研究では、日ごろ座っている時間が長い人で肥満者が多く立ったり歩いたりしている時間が長い人で肥満者が少ないという結果が報告されています。身構えた「運動」となると、「時間がないから」と敬遠してしまう人は、日常生活でのちょっとした「活動」を増やし、「座っている・ゴロゴロ寝ている」時間を減らすだけでエネルギー消費を増やすことができるのです。

図4ヒトのエネルギー消費の割合を示したグラフ
サルコペニア・フレイル

さて、高齢者でみられる「サルコペニア」や「フレイル」といった言葉が、ここ数年少しずつ世の中に知られるようになってきました。
身体の筋肉量・筋力が落ちてくる状態「サルコペニア」そういった状態をきっかけに日常の活力・機能まで低下してくる状態「フレイル」と言います。今回のコロナ禍により家で過ごす時間が増え、引きこもり状態となるなどして、これまで以上に高齢者の筋力低下や活力の低下が深刻な問題となってきています。みなさんは、筋力は落ちていませんか?

高齢の糖尿病患者さんでは、サルコペニアやフレイルになりやすいと言われています。
運動は血糖を下げるためだけではなく、筋力低下の予防にも有効です。運動療法の種類について(図6)に示します。
先に述べたとおり、運動療法で最も多いのは「ウォーキング」でした(2015年アンケート)。
ウォーキングなど「有酸素運動」は、食後の血糖上昇を抑えるなどして血糖改善につながるとされており、比較的簡単に始められることから、実施している人も多いと思われます。
ただ、サルコペニアやフレイル予防のための運動となりますと、「レジスタンス運動」「バランス運動」がより有効と考えられています。
「レジスタンス運動」とは、いわゆる「筋力トレーニング」を指しますが、こういった運動でも血糖コントロールの改善効果があることが最近わかってきました。

サルコペニアとは?
加齢などにより、全身の筋肉量が減少し、筋力や身体能力が低下している状態。
フレイルとは?

日本語では「虚弱」。加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、生活機能が障害された状態。

ただし、適切な支援により、生活機能の回復が可能。

図6運動の種類

よく、私の外来でも、「糖尿病をよくするためにはいつ、どんな運動をすればいいのですか?」といった質問を受けたり、「今月は何かと忙しくて運動する時間がありませんでした。」といった声を聞いたりします。
運動する時間帯や継続時間、頻度、種類など「より効果的な条件」はあるかと思います。筋力低下予防のためには「筋力トレーニング」が望ましいのは事実ですが、決して「ウォーキング」がダメというわけではありません。
頻度が少なくても、継続時間が短くても、食後でなくても、「運動」しないよりは、条件などは気にせずに少しでも「運動」したほうがよいのです。もっと言えば、「運動」でなくても、時間がないのであれば、「日常生活活動(NEAT)」を増やすだけでも、血糖を下げる効果、筋力を維持する効果は期待できます
運動療法に取り組むにあたって、私がふだん考えていることを述べさせていただきました。
運動があまりできていない人は、車で行っていた買い物を、明日から「歩き」や「自転車」に変えてみようという気持ちになりましたでしょうか?

まとめ
  • 糖尿病の日常診療において、食事療法に比べると、運動療法はあまり取り上げられていない。
  • 運動療法を行っていない患者さんの多くは、「時間がない」ことを理由に挙げている。
  • 日常生活において、「運動」よりも、通勤や買い物など「日常生活活動」によるカロリー消費(=NEAT)の割合が高い人が多い。
    運動する時間がない場合、「寝転がる・座る」時間を少なくし、「立つ・歩く」時間を多くするだけでもカロリー消費は増える。
  • 家にこもりがちになると筋力が低下し、「フレイル」になりやすい。予防するためには「筋力アップ」を目指した運動が有効となる。

お話しさせてもらったことが、明日からの生活において、「運動」や「日常生活活動(NEAT)」を見直す良いきっかけになってもらえれば幸いです。

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