糖尿病で通院されている患者さんに「血糖コントロールをよくするために、お米(炭水化物)を食べないようにしています」とか、「炭水化物を減らしてます」とよく言われることがあります。
確かに、お米や小麦粉などの穀類に多く含まれる炭水化物は、食後1~2時間の血糖上昇の「もと」ではあります。それをある程度制限することで食後血糖の上昇をゆるやかにしたり、体重減少・ダイエット効果を期待できたりするのも事実です。
しかしながら、結論から言うと、糖尿病の食事療法において炭水化物を極端に減らすことはあまり勧められません。
世間では「低炭水化物ダイエット」という言葉が広く知られるようになりました。
効果的なダイエットのためには食事中の脂質(油分)と炭水化物のどちらを減らしたほうがいいのか、という議論はかなり以前から世界中でなされてきました。そんな中、低炭水化物食、低脂肪食、地中海食(野菜や豆類・魚介類を中心としたヨーロッパ地中海地方の食事)の体重減量効果を2年間追跡した研究において、低脂肪食よりも低炭水化物食、地中海食でダイエット効果が大きかったと2008年に有名な医学雑誌に発表されました。
これより前にも、低炭水化物食による体重減少効果を確認できたとする研究がいくつか発表されています。こうした背景もあり、「炭水化物はダイエットのために減らすべきだ」とか、さらに進んで「炭水化物を取ると血糖コントロールが悪化する」といった風潮が広まっているように感じます。
そもそも、糖尿病の食事療法では、三大栄養素である、炭水化物・たんぱく質・脂質はどういうバランスで摂取するべきなのでしょうか。厚生労働省が出した平成25年の国民健康・栄養調査によれば、日本人の総エネルギー摂取量は平均1887kcalでした。その中のエネルギー比率は炭水化物59.3%、脂質25.9%。1960年代と比べると、炭水化物は減少し、脂質は増加していました。
日本糖尿病学会が推奨する糖尿病食事療法における栄養素摂取比率は、炭水化物50~60%、脂質25%以下となっています。つまり、今の日本の平均的な食事より、少しだけ脂質を減らせば、炭水化物はほぼそのままで良い、ということになります。
話を低炭水化物ダイエットに戻すと、このダイエット効果は短期間であることが多く、体重が戻ってしまったり、食事療法そのものが長続きしなかったりするなどの問題もあるようです。特に、危険なのは糖尿病患者が極端に炭水化物を制限すると、重篤な低血糖が起こってしまうこともあります。
世間の危険な風潮を受けて、日本糖尿病学会が2013年に「提言」を発表しました。その提言の中には、「体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする」と書かれており、「炭水化物のみを極端に制限して体重の減量を図ることは薦められない」と結論づけています。つまり、「お米だけを減らすより、今のバランスのまま食事量全体を減らしましょう。そうして、運動などによる消費エネルギーが上回れば、体重は減るはずです」ということです。
(三木山陽病院 平成27年広報誌より)
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